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昨年より中小企業の人事労務トレンドとして注目されてきた「防衛的賃上げ」。
日本商工会議所の2024年の調査によれば、業績改善が見られなくても賃上げを実施予定の企業が36.9%と、近年で最も高い割合となりました。2025年に向けてこの傾向はさらに強まる可能性があります。
なぜ防衛的賃上げが広がっているのか?
最大の理由は「人材確保」です。深刻な人手不足の中、採用市場での競争力維持と既存社員の引き止めのため、業績に関わらず賃上げを実施せざるを得ない状況が広がっています。また「物価上昇への対応」も大きな要因となっており、従業員の生活を守るための措置という側面もあります。
経営者が賃上げ決断に踏み切れない理由
多くの経営者が賃上げの必要性を理解しながらも決断に躊躇する背景には、いくつかの理由があります。
まず「将来の不確実性」への懸念です。景気変動や市場環境の変化に対して、一度上げた賃金は下げづらいという構造的な問題があります。
また「価格転嫁の難しさ」も大きな壁となっており、取引先との力関係から価格交渉が難航するケースも少なくありません。
そして「賃上げの効果測定の難しさ」も挙げられます。賃上げが本当に人材確保や生産性向上につながるのか、確証が持てないというジレンマも存在するのです。
中小企業の悩みどころ
賃上げ原資の確保が最大の課題です。多くの企業が「人件費以外のコスト削減」や「価格転嫁」に取り組んでいますが、実態は「特に対応はしていない(収益を圧迫している)」企業が最も多いのが現状です。限られた経営資源の中で、人材確保と収益確保の両立に苦慮しているのです。
これからの対応策
単なる賃上げだけでなく、賃金体系の見直しも重要です。従来の年功型から「貢献度反映型」への移行を検討し、限られた原資で効果的な報酬制度を構築することが求められています。また、賃金だけでなく働きやすさや成長機会など、総合的な魅力づくりが防衛策の鍵となるでしょう。
人事労務の専門家からのPOINT
賃上げが従業員に与える心理的効果
賃上げは単なる経済的効果だけでなく、「自分の価値を認められた」という心理的効果をもたらします。
特に期待値が高まる中での賃上げは、モチベーション向上、帰属意識の強化、離職率の低下につながります。
一方、期待を下回る賃上げは逆効果になりかねないため、事前の期待値コントロールが重要です。
賃上げと合わせて取り組むべき施策
①透明性のある評価制度の導入:賃上げの基準を明確にし、公平感を高めることで効果が増幅します
②キャリアパスの明確化:賃金とキャリアの成長を連動させ、将来の展望を示すことで定着率が向上します
③柔軟な働き方の導入:金銭的報酬と働きやすさを組み合わせることで、総合的な満足度を高められます
④教育投資の強化:賃上げと能力開発を連動させることで、生産性向上と賃上げの好循環を生み出せます
専門家からのアドバイス
「防衛的賃上げ」という言葉からは後ろ向きなイメージを受けますが、これを「戦略的投資」と捉え直すことが重要です。
人件費を「コスト」ではなく「投資」と位置づけ、その投資効果を最大化する施策を同時に実施することで、人材確保と業績向上の両立が可能になります。賃上げの機会を組織変革のきっかけとして活用し、より生産性の高い組織づくりへと転換していきましょう。
1. 人的資本経営とは?中小企業にも関係あります
「人的資本経営」とは、「社員」を単なる人件費ではなく、会社の成長を支える「価値ある資産(資本)」として考える経営の考え方です。簡単に言えば「人への投資が会社の未来をつくる」という発想です。具体的には以下のような取り組みを指します:
- 社員の成長に投資する: 研修やスキルアップの機会を積極的に提供する
- 数字で現状を把握する: 残業時間や休暇取得率などを見える化して改善する
- 長い目で見る: 短期的なコスト削減より、長期的な人材育成を重視する
- 取り組みを見せる: 社内外に「人を大切にする会社」であることを示す
「人的資本経営」という言葉を聞くと、「うちのような中小企業には関係ない」と思われがちですが、その本質は「従業員の成長を通じて企業が持続的に発展すること」です。これは企業規模に関わらず重要な考え方です。
特に従業員100人規模の中小企業では、一人ひとりの貢献が業績に直結します。人的資本経営の考え方を取り入れることで、採用・育成・定着の課題を解決し、競争力のある組織づくりが可能になります。
2. 中小企業が得られる具体的なメリット
人的資本経営を取り入れることで中小企業が得られるメリットは次の通りです:
- 採用力の強化: 「働きがいのある会社」として求職者に認識される
- 社員の定着率向上: 職場環境の改善により離職率が低下
- 生産性の向上: 社員のスキルアップによる業務効率の改善
- 取引先・金融機関からの評価向上: 人材への投資が外部評価につながる
つまり、「人が定着し、成長し、会社とともに発展する」好循環を生み出せます。
3. 中小企業のための実践ポイント
中小企業では大企業のような詳細な開示は不要です。自社に合った取り組みを始めましょう:
① 労働環境の改善
- 残業時間の管理と削減
- 有給休暇取得率の向上
- ハラスメント対策の徹底
② 人材育成の強化
- ITスキルなど必要な能力開発の機会提供
- OJTの充実による実践的な学びの場の提供
- 社内キャリアパスの明確化
③ 社員エンゲージメントの向上
- 定期的な1on1ミーティングの実施
- 社内アンケートによる課題把握
- 透明性のある評価制度の導入
④ 多様な人材の活用
- 女性・シニア層の活躍支援
- 外国人・障がい者雇用による新たな視点の獲得
4. 実践のための3ステップ
ステップ1:現状把握
まずは自社の「人的資本の現状」を数値で把握しましょう:
- 平均勤続年数・離職率
- 残業時間・有給取得率
- 研修実施状況
ステップ2:経営層の意識改革
人的資本経営は「人事部だけの仕事」ではなく、経営戦略の一部です。経営層が率先して取り組む姿勢が成功のカギとなります。
ステップ3:小さな改善から始める
一度にすべてを変える必要はありません。例えば:
- 月1回の1on1ミーティング導入
- 簡単な社内研修の実施
- 労働時間の可視化
小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体に良い変化が広がります。
5. まとめ:中小企業こそ人的資本経営を
人的資本経営は「大企業向け」ではなく、中小企業こそ取り入れるべき成長戦略です。従業員の成長と企業の発展を結びつけることで、採用力・定着率・生産性が向上し、持続可能な経営が実現します。
自社の現状を見つめ、小さな改善を積み重ねながら、人的資本経営の考え方を取り入れてみませんか?
人的資本経営と生産性向上は、中小企業を含むあらゆる企業にとっての成功への鍵です。
これらの重要性と実践方法について解説します。
人的資本経営とは
人的資本経営は、従業員の知識、スキル、健康、そしてモチベーションなどを企業の重要な資源とみなし、これらを育成し、活用する経営手法です。この考え方では、従業員を単なるコストではなく、企業成長のための価値ある投資と捉えます。従業員の能力を高め、彼らが持つ潜在能力を最大限に引き出すことで、企業の生産性と競争力を向上させることが目指されます。
中小企業にとってチャンス
中小企業は、その規模上、大企業に比べて柔軟性が高く、変化に迅速に対応できるという利点があります。この柔軟性を生かし、従業員一人ひとりの能力やモチベーションを理解し、育成することは、中小企業にとって大きな競争優位性を生み出すことができます。また、中小企業ならではの家族的な雰囲気や、密接な人間関係を活かして、従業員のエンゲージメントを高め、生産性の向上につなげることができるのです。
生産性向上の秘訣
生産性を向上させるためには、従業員が効率良く、かつ意欲的に働ける環境を整えることが必要です。これには、クラウドサービスを活用した業務プロセスの最適化や、従業員のスキルアップを支援するための教育プログラムの提供などが含まれます。また、従業員の健康やウェルビーイングを重視することも、生産性向上には欠かせません。健康な従業員は、より効率的に働くことができるだけでなく、創造的なアイデアやイノベーションを生み出す可能性も高まります。
具体的な取組として、
デジタル化の推進:
紙の文書を電子文書に置き換えることで、情報の共有とアクセスを簡素化。データベースやクラウドサービスを利用して、重要な書類やデータの検索時間を大幅に削減します。
クロススキルトレーニング:
従業員が異なる部署の業務を学ぶクロススキルトレーニングプログラムを実施。これにより、業務の理解を深め、チーム間の協力を促進し、柔軟な人員配置が可能になります。
健康促進プログラム:
月に一度のウォーキングイベントや、オフィスでのストレッチタイムを導入。社内で健康促進活動を行うことで、従業員の体調管理とチームビルディングを同時に促します。
リーダーシップの育成:
若手社員を対象としたリーダーシップ開発プログラムを設け、将来の管理職候補としてのスキルアップを図ります。メンタリングやコーチングを通じて、次世代のリーダーを育成。
柔軟な働き方の導入:
週に1日のリモートワークや、コアタイムを設けたフレックスタイム制を導入。従業員が自身の生活リズムに合わせて働けるよう配慮することで、ワークライフバランスの向上と生産性の向上を実現します。
コミュニティの形成:
趣味や興味を共有する社内コミュニティの形成を支援。例えば、読書クラブやランニングクラブなど、従業員が自主的に活動できるグループを作ることで、社内のコミュニケーションと社員の満足度を高めます。
これらの具体例を通じて、中小企業が人的資本経営と生産性向上に取り組む際に、実践的な方法として考えられるアプローチをご紹介しました。従業員の能力開発、健康の促進、そして働きやすい環境の整備は、生産性向上だけでなく、企業の持続可能な成長にも大きく貢献します。
これらの取り組みを通じて、従業員と企業の双方にとって有益な結果を生み出すことができるでしょう。
はじめまして、HRナレッジ合同会社と申します。
弊社は社会保険労務士事務所を併設しており、企業様より手続代行や給与計算代行にとどまらず、人事労務分野全般の改善に注力して取り組んでおります。
人事労務管理の課題解決に向けた弊社が提案できる内容について提案の例として紹介させていただきます。
中小企業が直面している労働時間管理の課題に対して、最初に提案するのは「(クラウドベースの)勤怠管理システム」の導入です。
このシステムにより、従業員の出勤、退勤、休憩時間の正確な記録が可能となります。
また、残業時間の自動計算機能やアラート機能を備えており、法定労働時間の超過を防止し、労働基準法違反のリスクを軽減します。
さらに、このシステムは従業員自身が自分の勤務状況を確認できるため、透明性の向上にも寄与します。
次に、就業規則の見直しについてです。現行の就業規則を、われわれ社会保険労務士などの専門家による詳細なレビューを通じて、
最新の労働法規に準拠させることを提案します。これには、適切な休憩時間、残業管理、休日の取り扱い、セクシャルハラスメント防止策などが含まれます。
法改正に迅速に対応することで、法的リスクを最小限に抑え、従業員の権利を保護することが可能になります。
コロナが落ち着いた現在の流行として、評価制度の導入を検討する会社様が増えています。
大きな理由としては、労働生産性向上を目指すことがあげられますが、評価制度は、従業員のモチベーション向上や目標達成を促進し、
企業の生産性向上に寄与します。労働者が自身の業績を評価されることで、仕事に対する取り組みが向上し、業績が向上することが期待できます。
評価制度というと大企業で導入するものと思われがちですが、企業の規模関係なく導入することが望ましいと考えています。
評価制度の導入は、従業員のエンゲージメントを高め、組織の効率性と成長を促進するために不可欠です。
人事評価と連動する賃金制度: 評価制度・賃金制度は、従業員の評価結果に基づいて昇進や給与の決定が行われる重要なツールです。
適切な評価制度を導入することで、公平な評価と報酬の連動を実現し、優れた人材の維持や引き留めに役立ちます。
企業文化の構築: 会社の実情にあった評価制度は、企業文化の一環として位置づけられ、目標達成や従業員の成長を支援します。
従業員に対するフィードバックや発展機会を提供することで、企業の価値観や目標を実現する手段として活用されます。
以上の項目に適切に取り組むことで、優れた人材の獲得と競争力の向上に寄与します。従業員が自身の成長や評価に納得し、
長期的なキャリアパスを見据えることができる環境を提供することで、他の企業との競争に優位性を持つことができます。
これらの提案は、貴社の人事労務管理の効率化と従業員満足度の向上を目指すものです。貴社の特性と資源を考慮し、最適な計画をご提案いたします。
貴社の更なる発展の一助となれば幸いです。
何卒、ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
HRナレッジ合同会社の社名は、会社の経営の中で重要な位置を占める人材、ヒューマンリソース(HR)と、
従業員の知識や経験、さらには集合知(ナレッジ)を大切にする姿勢から生まれました。
個々の従業員が持つ知識や経験だけでなく、集団としての知恵やアイデアの集積という意味合いも含んでいます。
私たちは、この集合知を活用し、多様な視点や革新的なアプローチを通じて、企業の人事労務管理を支援します。
その結果、従業員一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体の発展へと導くことを目指しています。
また、これらの知識と経験を組み合わせることで、企業にとって最適な人事戦略の策定や、
効果的な人材育成の方法を提案することが可能です。
HRナレッジ合同会社は、人と知識の融合を通じて、組織の持続的な成長とイノベーションを促進することに注力しています。